http://www.shinchosha.co.jp/book/303831/
 女による女のためのR−18文学賞文学賞受賞作ということで、立ち読み。
 実はネット立ち読みでは「ふーん」程度の感想で、感慨もなかったが、通しで読んだら、これは。
 凄い。
 この一言に尽きる。細部まで作り込まれた遊女の艶と哀しみと果敢無さ、華やかさ。一気に遊郭へと引き込まれる時代考証と、コトバ。美しくも悲しい御伽噺のような、いやらしさの交じり合った不思議な読後。
 買わなかったけど、買って損は無い。
 
 が、しかし。
 
 どれだけ文章による官能、「下っ腹の疼き」とやらを感じようとして、キワドイ部分を読み返してすら微塵も感じず。あるのは切なさ。遊女たちへのあはれと感嘆。
 話としては非常に良く出来ていて何の文句も無いが、これよりはまだダカーポの後ろに載っている二ページ程度の男性用エロ小説の抜粋を読んでいるほうが、少々萌す。特定の登場人物にも特にときめいたり、色香を感じたりすることも無く。これよりはベルセルクのグリフィスのほうが色香を感じたな、という感覚で。
 
 とはいえ、じゃあ己の小説で何を感じさせたいのか、または自分が何を感じるかというと、これまた微妙・・・・。男性向けまで突っ走れるわけじゃなく、だからといって女性向けで認められたこの緻密な世界観と女の哀れは目指せそうも無い。
 頑張って書いてても、とりあえず煩悶していて哀れっぽい色男がいれば、それでいいその程度のシロモノなんじゃないかとちょっと不安。
 この完成度を見せ付けられると。