正義と逸脱者のキャラクター

 最近、「正義のために!」と喝破する少年or男の主人公(いわゆるヒーロー)がいなくなった、と感じる。
 別にそういう主人公が好きじゃないので、構わないんだけど、代わりに出てきたのが「オレは正義なんかじゃないんだぜ、好きなことをやってるだけなのさ私怨を晴らす方が大事だろ」的な、ナナメ向いた責任転嫁・自分勝手型ヒーロー。周囲の状況によって悪にもなれば善にもなるのさ!
 まあ、確かに今まで正義正義と言いながら、どう考えてもお前私怨だろ!という、親しみやすい人間らしさと厳然たる正義の板ばさみで壊れていったヒーローばかりだったから、目下無関心がはびこるリアルに照らして、そのほうがきっと現実的ではある。
 それで仕方ないのかも知れない。
 でもそれってやっぱ逃げの自己正当化のカッコよさなんだよねー。
 「正義」という言葉には「お前偽善だろ」の責任が重く重く圧し掛かる。でも、行動の元がはじめっから私怨なら、責任という枷もない。整合性も適当でいいもの。
 
 男性は、結構世間のルールなんてぶん殴ってやるぜ的なアウトローに、惹かれる傾向がある。女性にしてみたら「悪い」としか思わないんだけど、もてはやされたりする。男性の中にも「いや、オレは全然いいと思わない」と嫌悪を抱く人がいるようなキャラ。(否、それは女も引かれる?だろうか。でもとりあえず、男性向けということにしておきます)
 この、アンビバレンツに犯罪者に惹かれてしまうような感覚、分かる気がしないでもない。
 この、男性が「ありえないよね」と思いつつも心のどこかで惹かれてしまうアウトローを、女にしてみるとそれは「娼婦」なのだから。実際の職業としているいないは置いておいて、性的に奔放な女。
 
 女性には男性とは違ってもう一つ、ルールが二重標準で、性的貞淑という枷が今まで課せられていた。今もそうかも知れない。
 一部の女性は激しい嫌悪を催すが、やっぱり心のドコかで性的に奔放でルールや品性なんて放り出してしまった女の中の「恐れぬ逸脱者」を、少しだけ「スゴイ」と思ってしまう気持ちが生まれてしまう。男性からしたら「え、そんな女ダメじゃん」としか思えないけど、それはお互い様。
 大抵はアウトローが死ぬように、カノジョも羨望と嫉妬に塗れてめっためたにされてしまうのだが、やはり女の心には「娼婦」に憧れる部分があるのではないだろうか。男が、アウトローに惹かれるように。
 
 私は正統派の、曇りのない、穏やかで謙虚で同情心の深いヒーローが好き。
 守ってあげたくなってしまうもの。
 でもめっためたにしたいのは、アウトローだろうか。
 娼婦のピンヒールで踏み付けて、つんざくような野太い悲鳴を、上げさせたいものデス。