マレーナと三番目の男

 イロイロと言いたいことはあれど置いておいて、ココの趣旨に沿うことを一つ。
 映画最後の独白で、主人公が
「何人もの女性を愛したけれど、憶えているのは彼女のことだけ」
 という所。
 物凄く共感してしまった。
 私も「恋」「愛」という言葉で連想するのは、二十一歳の時に(多分人生においては三番目に)好きになった男のことだけで、他の人間は思い出さない。その後、少なくとも五人の人間を本気で四苦八苦するほど恋うたし、そのたび懊悩して恋心の幸福と憂鬱に悶えた記憶がある。
 なのに思い出すのは、あの人だけ。
 元々恋をした順番で言ったら三番目の人で、別に初恋でもない。
 何故こんな事が起きてしまうんだろうか。
 突き詰めて考えてみて、答えが出た。
 そうか、生まれて初めて「欲望した相手」なんだ、と。
 初恋は小学生三年生で相手は十八歳だった。次に好きになったのは中二の同級生。当然ながら私は少女だったので、レナートのように性の目覚めは経験しなかった。
 が、その後。すっかり成人した二十一歳の時、私は初めて誰かを心底、肉体的にも「欲しい!」と思った。それがあの「三番目の男」だったんだ。だから、官能を書くとき、思い出すんだろう。
 レナートにとってのマレーナ、それがあの人か。
 あの激しい感情と欲望の上乱下。もう経験したくないな。
 
 
 というよりも、恋自体、全然最近はしていないんだけどね。