ベルセルクと民兵と戦争についてテキトーに

(他の日記からの転載。書きかけ雑多メモ)
 私は魔物とか出てくるとそれだけで読まないんだけど、歴史上の戦争については詳しかったりする。
 
 なので分かってしまうので、ついつい推測してしまう。
 ミットランドがゴンドールだとか言うのはもういいの。知らなかったし。
 ただ、ベルセルクの世界観は英と仏の100年戦争終期と、ジャンヌ・ダルクがモデルだよね。グリフィスのあの白銀の鎧、ジャンヌが王子からじかに戴いた鎧にそっくりだし・・・・でもそれにしては、軽々としすぎだよな、とか気になってしまっていた。
 中世の鎧は、全部で30キロあって、馬から落ちたらどんな戦士も起き上がれずに最後だった筈なのに、とか。ガッツくらいムキムキなら大丈夫だっただろうに。その鎧の重さを策略に入れて、雨の泥沼に誘き出し、圧勝!とかいう作戦を描いたら良かったのに、とか、考えてしまう。
 傭兵の横行や人間の残虐行為は、神聖ローマ帝国時代(傭兵の虐殺によって、120万人の国民が60万人に減ったほど)の内戦がモデルっぽいよね。だって、ベルセルのアニメのオープニングの、木に吊るされた人間の図、あれ神聖ローマ時代に描かれた傭兵の蛮行記録原画そっくり。
 戦争の残虐絵だったらゴヤに敵うものはいないが・・・・。
 でもどうしても気になってしまうのが、戦争描写よりも、ミットランドの財政。
 ちなみに仏と英の百年戦争がどうしてあんなにグダグダ続いちゃったかというと、捕らわれたのが貴族だと、殺されなかったせい。彼らは身代金で解放されたり、戦争を数年禁じられただけで、祖国に無傷で帰れたりしたため、王族貴族は本気で戦争を終わらせたり戦ったりする気が無く、傭兵を雇って片手間に遣っていた。
 つまり、100年も続いちゃうって事は、停戦が何度も起きたということで、傭兵は停戦になると飯が食えなくなるので、盗賊や強盗に変貌して町々を襲いまくってた。
 しかも本拠地がお互い海を挟んでいたので、本拠地を叩けないのと、実際の惨劇を本地が知らないことが長期化の理由とも言える。
 +敵国同士のぐだぐだな関係。
 どうしても理解できないのが、1000人の騎士団とか、現実味がなくて、唖然としたっけなぁ。中世設定で1000人とか一万人とか、なぁ。
 王に与えられた軍隊で400人で、王と同じ権力と財産を持っていた領主が、やっと200人の騎士団を養えた時代なのに・・・・。それに後で書くけど、傭兵がそんなに大勢ってコワい。
 
 それはそうと、正直、ミットランドとかだと、内陸続きで100年も続いてて、なのに国同士が本気で争っているという状況が謎。さっさと終わらせないと、お互い金がなくなって滅んでしまうと思うのだが。
 実際、ミットランド王室のモデルである仏の王族はというと、100年も傭兵雇ったり騎士団の養いやら武器の作成、または向こうに捕えられた将軍の身代金を払ったりして、借金まみれだった。金のある貴族や豪農から借金をしまくり、彼らは政治決定にかなりの影響力があった。
 また、100年も貴族の統括を放置したせいで、領地はばらばら。戦争にかまけるのが馬鹿らしいと感じる領主たちはこれ幸いと、自分の財産と領地を増やすことに専念し、ほぼ独立に近い領主国を作ったりしていた。
 100年も続けば、当たり前。
 戦っている貴族は有志たちだけで、あとは傭兵。
 ・・・・グリフィスは、どうしてもミットランド王室じゃなきゃダメだったのかなあ、と本気で思う。
 どこかの小さな地方領主に婿として入って、戦争に忙しがっている王室なんか放っておいて、着々と領地を拡大し(結婚や戦争。戦争はお得意のはず!)、金を溜めて独立国ほどの勢力を持つ。で、いざって時に王国へ騎士団を向けて戦争を有利に導き、戦力を見せつけ、王族貴族に顔を売る。
 機を見て金を配り、独立する!
 独立宣言は無論内戦の泥沼になるだろうけど、チューダーとの戦争を終わらせなければ、国がそっちに戦力を割いているから、酷いものにはならないはず。そもそも鷹の団は、ミットランドで最強なんだから、恐れることは無い。
 そうなったら、今度は地方妻は暗殺し、ミットランドはユリウスに継がせ、チューダーとの戦争を終わらせて、姫を娶る。もしくは娘を作ってアドニスと結婚させる。
 そうしてから、ユリウスを暗殺し、後見として王室に入り、ミットランドをも手にする。
 中世だったら15歳は、現代の25さいといってもいい年齢。風習に習って、息子or娘が十になった時点で結婚させ、領地を大きくして、勢力を増すことも出来ただろう。それでもグリフィスはヘマさえしなければ、35歳にもならない。男盛りで、王だって目指せる。
(でもこう考えると、ガッツもグリフィスも二十歳前後ってことは、現代に置き換えたら30歳近いのに、友情で悩んだり喧嘩したり、青いなあ・・・・中世の年齢を、+10の現代に置き換えるのって、ファンタジーでは禁じ手なのかな? 日本でも二十年前までは、本当に14くらい結婚していたし、中世では幼児同士の婚姻も流行っていたし、中国でも三十年前まで12歳同士で結婚して子作りが当然の時代がずっと続いたから、中世で二十歳の男って言うと、もう本当に立派な大人で、悩んでると哂っちゃう。だって三十路でフリーターと同じだもん。まーいいんだけど!)
 ともかく、年齢的なものもあるし、このプランじゃ、ダメだったのかしらん。
 少なくともグリフィスと鷹の団だったら、グリフィス公国の独立まではヤレたはず。私、信じてる。原作読んでいないから、わかんないけど。
 ちっちゃくても、一国一城の主じゃん。
 私が考えたわけじゃなくて、野心的な仏の領主がある程度までは当時、実際にやったことなんだけど。こーゆー政治のし上がり物語も凄く面白そうで、私に実力があれば書いてみたいほどv
 まあ・・・・グリフィス、あんまり物考えて無さそうだからなあ。いや違うな。すみません。帝王学君主論を教えてくれるものもおらず、平民であそこまで考えられるということが、奇跡なわけだけど。
 
 で、傭兵の話。
 古今東西の戦争を摘まみ食いに調べて分かるのは、教育されていない兵士、団体(騎士団とか)に所属していない民兵や傭兵が、一番怖いということ。
 軍人は、残虐行為をしたとしても、まだマシだという現実。
 でも傭兵や民兵ではなく、軍人であっても、質は「教育」されているか否か。
 当たり前だが、感情のコントロールもろくに教わっていない「素人」が、いきなり殺し殺される世界に連れて行かれて、極度のストレスを負わされたら、残虐な行為に走るのは充分に予想が付くこと。
 まだマフィアの方が、傭兵よりはマシ。彼らマフィアにとって暴力はビジネスの一環。政府があって法律があれば、その抜け穴で稼ぐのが彼等の遣り方で、何人かを見せしめに残虐に殺す事はあっても、マフィアは基本的に殺しを「出来れば遣りたくない汚れ仕事」と認識している。
 マフィア同士の殺しなら、警察が多めに見てくれることも知っており、またイタリアマフィアがあれだけ攻勢できたのは、様々なチーム同士が連携して部下を預け合って、儀式と教育を施したからだ。(ちなみに現在は、独裁国からの移民マフィアらの流入で弱体化している。独裁国家での拷問や弾圧に耐えて遣って来た移民マフィアたちは、イタリアマフィアよりも残虐非道で、手加減が無い。コロンビアとか、ヒドイ。ちなみにアフリカではマフィアという組織そのものがない。「法律」が無いから、犯罪そのものが認識されない。泥棒も強盗も殺人も、ビジネスなんか関係なく、生きるために遣ること。それがアフリカ)
 民兵の恐ろしさに戻るけれど、傭兵の軍人上がりならまだいい。
 傭兵を始めとして、専門的な教育を受けていない暴徒同然の民兵やら「素人」に近い人間を戦地に連れて行く「徴兵」が、戦地をより荒廃させる。
 ある国の(あえて伏せ)軍隊は、連合軍として他の国々と共闘した際、あまりに規律正しく有能で立派、性犯罪などがゼロに近いほど少なかったため、他の国々の指揮官から「どのように教育しているのか、素晴らしい!」と感嘆された。
 だが、その後のある戦争中、兵が足りなくなり、強制徴兵でド素人を訓練も無く戦地に連れてくようになって、凄惨な事件を次々と起こした。
 私は古代の戦争にはあんまり詳しく無いが(つーか資料がめちゃくちゃだからさー。父親が神とか言われちゃったり、数万の兵とか絶対嘘としか思えん。人口そんないねーのに)、100年戦争でも仏の領地が荒廃したのは、まともな訓練も無い、村から戦火に焼きだされた傭兵に実戦を戦わせ、その上、彼らは停戦時に放逐されてしまうという現実があったから。神聖ローマ帝国でも内戦で民兵が横行したから。第二次世界大戦も、ベトナムも、素人を使うようになって、そうなった。ユーゴでもルワンダでも大虐殺の大本は政府軍ではなく、恐怖と混乱に巻き込まれて武器を持っただけの一般人、民兵だ。
 つまり、教育されて無い兵士を使うようになったら、その戦争は負け戦で、末期。国としても終わっている、ということ。仏はそうだったし、今はアメリカがそうだ。
 今アメリカは、戦時中。ドラマで嘘は流さないだろうから(多分そんなことしたら、過激派に殺される)言ってしまうけれど、兵士が足りていない。
 なので、「一年の仮入隊」と偽って入隊させ、一年経った後、「二十五年の任期延長」という命令を出して、戦地に引き止めたりしている。国家に騙されたそんな兵士が、イラクでまともに誇りある兵士として戦えるか? ましてや人間として正しく振る舞えるか?
 私だったら、無理だな・・・・だって一年のはずだったじゃん!って思うもん。
 
 なまじ、古今の戦争について知っていると、やはり戦争漫画(映画もかも)は厳しい。
 何処から拝借したのか分かっちゃうし、矛盾も分かってしまう。そして連想が連想を呼び、あっという間に漫画の世界から思考が離れて、「そういえば、ここに描かれてるモデルになった戦争、どうだったんだっけ?」とか考えており、ふと気付くと、歴史書とか読んでたりする。
 それだったら、もうどこのいつの戦争か決めてさー、それを掘り下げて欲しいとか思う。そうしたら私の勉強にもなるし、何処を変えたのかで作者の勉強振りも分かるのにー。